福島県双葉町にある浅野撚糸の工場「フタバスーパーゼロミル」では、震災と原発事故からの復興を願い、地域とともに歩む取り組みを続けています。今回は、工場併設のカフェで働く19歳の鈴木志歩さんのエピソードを紹介します。震災後の困難を乗り越えながら、地域復興の一助となるべく奮闘する彼女の姿をご覧ください。
高校生語り部との出会い:「あなたにとって復興とは?」
今年1月、「フタバスーパーゼロミル」には震災当時3~5歳だった福島県内の高校生約40人が見学に訪れました。彼らは「震災、原発事故の経験を自分の言葉で語れる最後の世代」として県から呼びかけられた「高校生語り部」です。工場見学の後、社員との意見交換の時間が設けられ、その中で年齢の近い鈴木志歩さんが「あなたにとって復興とは?」と尋ねられました。
鈴木さんは「考えたこともない、難しい質問でした」と言いながらも、「建物をつくるとか、目に見える復興は何もやっていません。でも、こうしてお客さまが来てくれることで、街が明るくなる。私がここにいること、それも復興なのかな」と、自分なりの思いを語りました。この率直な言葉に、高校生たちは深く共感した様子でした。
復興に携わる決意と成長への道
震災当時6歳だった鈴木さん。原発事故の影響で、約2カ月間、親類のいる東京に避難した経験を持ちます。福島県いわき市の自宅は大きな被害を受けなかったものの、「中学、高校になっても、ずっと続いている問題がたくさんある」と振り返ります。そんな中で、「何かしらの形で復興に携わりたい」という強い思いが芽生えました。
その思いを胸に、彼女は浅野撚糸に入社。工場併設のカフェで働きながら、地域の明るさを取り戻すために努力しています。浅野撚糸の社長である浅野雅己との面接では、「まだ何もない双葉町の復興を引っ張る決意に触れて『かっこいい』と思った」と語ります。
社長の思いと共に、復興の糸を紡ぐ
鈴木さんが「私がここにいること、それも復興なのかな」と語った時、その場にいた浅野社長は「誇らしくて涙が出ました」と述べています。浅野撚糸としても、社員とともに地域の復興の糸をより合わせていると実感しており、「この地で心臓を打ち鳴らし続けて、呼吸して、成長して、そして世界に羽ばたいていくことが、復興に、皆さんの思いに応えることかなと思っています」と語ります。
結びに
浅野撚糸「フタバスーパーゼロミル」は、震災後の福島県双葉町で地域と共に成長し、世界に向けて新たな可能性を発信しています。鈴木志歩さんのような若い社員が、その一翼を担いながら、自らの経験と想いを通じて地域に貢献し続けていることを、これからも皆さまと共に見守り、応援していきたいと思います。
私たちは今後も、地域の皆様とともに歩み続け、未来へとつながる「復興の糸」を紡いでいきます。
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